I様は建坪約13坪の小ぢんまりとした住宅で暮らしておられました。築30年以上が経過し、あちらこちらの傷みを気にされてご相談に来られたのです。
新築当時の確定図や設備機器などのリストもなく、水まわりの設備や建具など、初見でもかなりの傷みがることがわかりました。屋根瓦や室内の状態から構造材の傷みも予想されました。このままだと、台風や地震の災害時に危険だと心配されているご様子で、何度か相談に来られた後に全面的なリフォームをご決断されました。
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設計図がない場合は、点検口や通気口だけではなく、内部をできるだけ見ることができるようにして、さまざまな箇所を確認し、以前の工法の知識と合わせて、復元図を作成することから始めます。
構造材の劣化は想像していたとおりかなり進んでおり、このままだと大きな揺れの地震、記録的な風雨に晒された際に倒壊するおそれもあります。
I様邸は平屋建ての構造。以前の工法や基準でも、築数年程度なら問題はないでしょう。しかし、多層階の複雑な構造で目には見えないところが劣化している場合や、平屋の比較的強度を保ちやすい構造でも経年での劣化が大きい場合は、近年の記録的な豪雨や頻発する地震では、これまで予想しなかったことが起きてしまいます。
木造建築の場合、たとえどんな構造でも、屋根材の加重が構造にかける負担や、構造自体に使用する木材の性質、木材同士の接合方法など、多くのことを熟知した上で施工する必要があります。そうした熟練の匠を揃え、それらの知見を継承している工務店は、昨今では少なくなっていると感じています。
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結局、基礎を残しつつ補強し、既存の建具で再利用出るものはできるだけ利用できるように手を加えることで費用を抑えつつリフォームするということでI様にご了承いただきました。
かなり綿密な事前準備が必要ですが、それがきちんとできるのは、多くの木造建築の実績があり、木の特性を知り尽くした佐藤工務店ならではです。
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基礎を補強した上で、床材はすべて剥がし、床下の防水、床組みもすべて見直し、段差のあったバスルームなどとの床面もきちんと調整します。
湿気が進入しやすい屋根周りも、防水処理をし直し、既存の瓦に替えてガルバリウム鋼板を使用ました。
ガルバリウム鋼板は、従来の和瓦に比べてかなり軽量なため、構造材にかかる負担も軽減されます。また、金属なのに防錆性、断熱性、遮音性に優れているのも特徴です。
ただし、扱いに慣れていない施工会社だと錆びるのが早くなってしまうなど、その特徴を活かしきれない場合があるので施工会社を選ぶ際は注意が必要です。
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外観はガルバリウム鋼板の金属の質感と木材の自然素材を組み合わせて、モダンで明るい雰囲気に。
室内は白を基調に明るめの床材や天井材、暗い部屋にアクセントで光を採り入れる丸窓を設けています。丸窓は、建物の顔ともいえる玄関横で、外観のイメージをひき立てる役割も果たします。
和モダンの柔らかい雰囲気に生まれ変わった住宅で、I様は、以前のように大雨や地震の災害を気にされることない安心した日々を過ごされています。
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